Tech Magazine編集部の @v2okimochi です!
オプトテクノロジーズで運用している裁量労働制について、実際の例も交えながら解説します。
オプトテクノロジーズでの勤務形態
弊社エンジニアの労働形態は、 一部の例外 (マネージャー・部長・新卒入社直後など)を除いて、基本的に裁量労働制です。
裁量労働制には企画業務型裁量労働制と専門業務型裁量労働制の2種類が存在しますが、弊社エンジニアの場合は 専門業務型裁量労働制
にあたります。
裁量労働制を適用できる対象業務は19種類に限られており、弊社エンジニアの業務で該当するのは (2) 情報処理システムの分析又は設計の業務
です。
弊社では、 個人やチームの成果を最大化することを意図して裁量労働を取り入れています。その手段として、 時間の使い方
や 日々の勤務時間
に関する裁量は、各チームや個人へ大幅に委ねられています。
また、裁量の範囲内で フルリモート勤務
や 部分リモート勤務
も活用しています。弊社エンジニアの間では 出社せず、自宅などで勤務すること
をフルリモート、 出社時間をずらすなどして、会社・自宅などでの勤務をすること
を部分リモートと呼ぶことがあります。
裁量労働制をどのように活用していくかは、オプトテクノロジーズ全体で定期的に見直しながら改善を図っています。本稿では、この 専門業務型裁量労働制
の概要を解説しつつ、オプトテクノロジーズでの運用例を取りあげます。
専門業務型裁量労働制の概要
裁量労働制の位置づけ
裁量労働制は みなし労働時間制
*1の1つです。裁量労働制では、実際の労働時間にかかわらず「労使協定で定めた労働時間だけ働いた」とみなします。
cf. 厚生労働省 - 労働時間・休日に関する主な制度, みなし労働時間制
裁量労働制の適用にあたっては労使協定が必要となるほか、業務遂行の手段や時間配分などに関して 使用者が具体的な指示をしないことが前提となります。 労働基準法 第三十八条の三を見ると、以下のように「業務遂行の手段や時間配分の決定などを、使用者が具体的に指示することが困難」と定められた業務だけが対象だと読み取れます。
業務の性質上その遂行の方法を大幅に当該業務に従事する労働者の裁量にゆだねる必要があるため、当該業務の遂行の手段及び時間配分の決定等に関し使用者が具体的な指示をすることが困難なものとして厚生労働省令で定める業務のうち、労働者に就かせることとする業務
また、裁量労働制であっても時間外・深夜・休日の労働に関する規定は 依然として適用されます。たとえば 専門業務型裁量労働制
では、以下のことが言えます。
- 1日のみなし労働時間が8時間を超える場合、そのぶんは時間外労働となる
- 深夜 (22:00~05:00)に労働した場合は、深夜業として扱われる
- 法定休日に労働した場合は、休日労働として扱われる
cf. 東京労働局 - 専門業務型裁量労働制の適正な導入のために (2014)
専門型裁量労働制の条件
裁量労働制のうち 専門業務型裁量労働制
の対象となる業務は、2020年3月時点では研究業務やコピーライターなど19種類です。
オプトテクノロジーズでの開発業務は、これらのうち2番目の 情報処理システムの分析又は設計の業務
に該当します *2。この業務は、厚生労働省では以下のように定義されています。
「情報処理システム」とは、情報の整理、加工、蓄積、検索等の処理を目的として、コンピュータのハードウェア、ソフトウェア、通信ネットワーク、データを処理するプログラム等が構成要素として組み合わされた体系をいうものであること。 「情報処理システムの分析又は設計の業務」とは、 (i)ニーズの把握、ユーザーの業務分析等に基づいた最適な業務処理方法の決定及びその方法に適合する機種の選定、 (ⅱ)入出力設計、処理手順の設計等アプリケーション・システムの設計、機械構成の細部の決定、ソフトウェアの決定等、 (ⅲ)システム稼働後のシステムの評価、問題点の発見、その解決のための改善等の業務 をいうものであること。プログラムの設計又は作成を行うプログラマーは含まれないものであること。
オプトテクノロジーズで開発している社内向けプロダクトを例に挙げると、エンジニアはたとえば以下のような動きをしています。
プロダクトのユーザであるオプト社員
のニーズを把握するため、ビジネス側のメンバー *3と連携を取る- 目的を達成するための最適なプロダクト設計を模索し、技術選定を主導する
- 考案した設計に基づいて、自らも開発に携わる
- 完成したプロダクトや追加機能について継続的に運用し、障害対応や改善活動を行う
上記のように、オプトテクノロジーズでは プログラムの設計かコーディングだけを行っているのではなく、「なぜそのプロダクトが必要なのか」、「その機能によって誰がどのように嬉しくなるのか」などを意識しながら、仮説思考と問題解決を繰り返しています。こうした活動は作業の洗い出しや工数見積もりにブレが出やすく、チームや個人に裁量をもたせる意義があると考えられます。
制度導入に必要なこと
上で紹介した厚生労働省Webページの詳細を見ると、専門業務型裁量労働制を導入するためには以下が必要とされています。
制度の導入に当たっては、原則として次の事項を労使協定により定めた上で、様式第13号により、所轄労働基準監督署長に届け出ることが必要です。 (1) 制度の対象とする業務 (2) 対象となる業務遂行の手段や方法、時間配分等に関し労働者に具体的な指示をしないこと (3) 労働時間としてみなす時間 (4) 対象となる労働者の労働時間の状況に応じて実施する健康・福祉を確保するための措置の具体的内容 (5) 対象となる労働者からの苦情の処理のため実施する措置の具体的内容 (6) 協定の有効期間(※3年以内とすることが望ましい。) (7) (4)及び(5)に関し労働者ごとに講じた措置の記録を協定の有効期間及びその期間満了後3年間保存すること
健康・福祉確保措置
では、労働者の勤務状況に応じた措置の例として 特別な休暇
や 健康診断
などが挙げられています。また、労働者の勤務状況を正確に把握することの必要性も、以下のように記載されています。
健康・福祉確保措置をどのように講ずるかを明確にするためには、対象労働者の勤務状況を把握することが必要です。 使用者が対象労働者の労働時間の状況等の勤務状況を把握する方法としては、対象労働者がいかなる時間帯にどの程度の時間在社し、労務を提供し得る状態にあったか等を明らかにし得る出退勤時刻又は入退室時刻の記録等によるものであることが望ましいことに留意することが必要です。
苦情処理措置
では、労働者からの苦情に対応できる 具体的な内容を明らかにする必要性が記載されています。望ましい例として、苦情の窓口や担当者、取り扱う苦情の範囲、処理の手順や方法が挙げられています。
また、それらを具体的に定めるだけでなく、 労働者が苦情を申し出やすい仕組みとする
ことにも言及されています。
オプトテクノロジーズにおける裁量労働制の運用例
ここでは、2020年3月13日 時点のオプトテクノロジーズにおける適用例・運用例を紹介します。
裁量労働制の取り決め
オプトテクノロジーズでは、以下のような裁量労働制を適用しています。
- 専門業務型裁量労働制
- 1日のみなし労働時間は
8時間30分
(所定労働時間は7時間30分
)
時間外・深夜・休日の労働に関する規定も当然、適用されています。深夜や休日の労働には上長承認が必要となる*4ほか、プロダクトの障害対応などでやむを得ず深夜に稼働したエンジニアは、深夜労働として勤怠登録をしています。
日々の勤怠登録はWeb上で行われており、エンジニアがいつどのくらい働いたのか、どこで有給休暇を使ったか、などの記録から、マネージャーなど上長が各エンジニアの勤務状況を把握できます。
オプトテクノロジーズ独自の取り決め
オプトテクノロジーズでは、法的な取り決めに加えて独自にテクノロジーコース *5の運用ガイドラインを作成しており、裁量労働制を活用できるよう試行錯誤しています。
運用ガイドラインでは、主に以下を取り決めています。
- 裁量労働制を適用する意図
- 自身の成果 + チームの成果を最大化させることにある (そのための改善活動を行い続ける)
- 前提として、他者の業務効率を阻害しない
- これらの原則に沿わない行動に対しては、互いに注意・改善する
- 勤務時間について
- 部分リモート・フルリモート勤務について
- 体調不良なら勤務せず休む
- フルリモート勤務できる回数は週1回まで (オプト全体の制限に合わせる)
- フルリモート勤務の制限は、不可抗力の場合は緩和できる (台風で交通機関が麻痺しているなど)
- 勤怠管理について
- 有給休暇の取得方法として、
全休 (1日)
のほかに半休 (半日)
などがある - 休日に勤務した場合、振替休日の取得を推奨する
- 有給休暇の取得方法として、
例外的な状況においては、これらの取り決めが一時的に上書きされることもあります。たとえばフルリモート回数制限については、新型コロナウイルス感染症 (COVID-19)の拡大に伴うオプト全体の方針に合わせて一時的に完全解除されたこともあります。
cf. 株式会社オプト - 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策に関する当社の対応方針について (2020/02/26)
運用ガイドライン自体は、オプトテクノロジーズのメンバー全体で定期的に見直し・改善を行っています。内容に疑問や意見があれば、メンバーの誰でも自由に発議できます。
裁量労働制を実際に運用している例
オプトテクノロジーズで「裁量労働制のエンジニアが普段どのように業務を遂行しているのか」の具体例として、Opt Technologies Magazineでは エンジニアの1日シリーズを公開中です。
様々な立場のエンジニアが「日々どのような業務をどのように進めているのか」を紹介しており、本稿執筆時点では以下の3件が公開されています。
また、プロダクト開発においてエンジニアが技術選定を主導した具体例についても、以下の2件が公開されています。
まとめ
本稿では、裁量労働制 (特に専門業務型裁量労働制)の概要とオプトテクノロジーズでの運用例について解説しました。
オプトテクノロジーズでは各エンジニアが裁量労働制を業務に活用していることを自負していますが、必ずしも最適な運用を達成できているわけではなく、日々様々な課題と向き合っています。
裁量労働制の導入・運用にあたって、個人がそれぞれ「直面した問題を自らの裁量で主体的に解決する」ことを手助けできるような環境づくりに役立てば幸いです。
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