Opt Technologies Magazine

オプトテクノロジーズ 公式Webマガジン

第3回 5分くらいで読めるエンジニアのためのインターネット広告講座

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こんにちは自称アドテクおじさんのhiraivaです。さらに間が空いてしまいましたが、忙しいエンジニアでも5分で読めて、インターネット広告の基本的なところがわかる読み物を目指して、この企画をやっていきます。

極力中立的に書きたいと思ってはいますが、本メディアはOpt Technologiesのメディアなので、オプトの事業内容に偏っている内容があります。あらかじめご認識ください。

第3回 インターネット広告の考え方〜ダイレクトレスポンスとブランディング

何のために広告を出すのか

第1回 で説明したように、広告とは投資です。何かしら目的があって、広告主はお金を払い、広告を出します。

インターネット広告の世界では、広告を出す目的としては大きく分けると ダイレクトレスポンスブランディング の2つになると思います。

ダイレクトレスポンス

ダイレクトレスポンスとは言葉の通り広告を見た人(オーディエンス)からの直接的な反応を目的とすることです。

インターネット広告では、クリック数やコンバージョン数などで定量的にオーディエンスの反応を計測することができるので、それらを成果指標とし広告を配信します。実際には、計測数値を元に CPA*1 や ROAS*2 を最終成果指標とすることが多いです。直接的に広告の投資対効果を表すものになりますからね。

ダイレクトレスポンスでは、より効率よくオーディエンスに反応してもらうこと、つまり CPA や ROAS を改善するトライアンドエラーを繰り返しながら、投資対効果を最大化することを目指します。

ダイレクトレスポンスの例

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例えば、こんなディスプレイ広告*3を配信するとします。広告主は「グルメサイト オプト」です。その場合、配信を開始する前に運用プランとして、以下のようなことを決めたりします。

  • 成果地点は「グルメサイト オプト」での飲食店の予約(予約完了画面にCVタグが埋められている)
  • 成果指標は予約の獲得件数および CPA*4
  • 獲得件数は1,000件、CPAは3,000円を目標とする(つまり予算は300万円)
  • 配信期間は1ヶ月(ただし、成果指標の進捗によっては延長を検討する)
  • ターゲティングは自社サイト来訪者のリターゲティング*5を主体とし、いくつかのターゲティングを組み合わせる

運用プランは、過去の実績や広告主の要望などを元に決めます。

例えば、「グルメサイト オプト」では予約1件から得られる売上が平均5,000円だっとします。利益や諸経費を考慮して、3,000円で予約が1件獲得できれば、採算が合うと考え、CPA目標を3,000円にしました。

また、「グルメサイト オプト」の業績目標がひと月あたり200万円の売上増だったとします。既存ユーザーにもある程度は広告が配信されるので、売上増につながらない広告経由での予約が1/3あると仮定し、この広告配信では1,000件の予約が獲得できれば、200万円の売上増が見込めるだろうと考えました。

そして、配信がはじまると、広告運用者*6は成果指標の進捗を見ながら、様々なチューニングを行っていきます。

ターゲティングについては、リターゲティング対象の調整*7や、デモグラフィックデータ*8を使ったターゲティングなどを組合せて、獲得件数を増やすように調整していきます。

また、現在の運用型広告は入札金額*9やCPC*10CPA*11の調整ができますので、成果指標の進捗を見ながら、目標とする獲得件数とCPAが達成できるように調整していきます。

ダイレクトレスポンスの課題

これまで説明してきたように、ダイレクトレスポンスはオーディエンスからの直接的な反応を目的とし、定量的に設定した成果指標の達成を目指すものです。

定量的に白黒つきますし投資対効果がわかりやすいですが、万能ではありません。例えば、どちらかというと近視的な成果に目が行きやすく、長い目で見た広告の影響(良い面も悪い面も)が配慮されにくいと言われています。

とはいえ、投資対効果がわかりやすいのはビジネスを維持・拡大する上で非常に有用なので、今後も広く行われていくでしょう。

ブランディング

ブランディングとは、ダイレクトレスポンスとは異なり、オーディエンスの直接的な反応ではなく、ブランドイメージの向上やオーディエンスとの関係性向上を目的とすることです。間接的に中長期的なビジネスの維持・拡大を目指している形になりますね。

かつては、ブランディングとはマス広告*12が担うものであり、インターネット広告といえばダイレクトレスポンスでした。

インターネットにすっかり慣れ、人々のメディア指向が近年変化してきたこと*13を背景に、インターネット広告においてもブランディングに取り組む事例が増えています。

ブランディングにおいては、ダイレクトレスポンスのような、わかりやすく投資対効果を示す成果指標はあまり存在しません。「イメージが良くなったこと」を定量的に計測しようとすると難しそうなことをイメージしてもらえれば良いと思います。

しかしながら、広告とは投資ですから、投資対効果を説明できないと実施する意味がなくなってしまいます。

そのため、ブランディングの場合では「ブランドリフト」*14をアンケートなどにより検証したり、「エンゲージメント」*15SNSでの反応率により計測したりすることで、広告効果を説明しようとします。(ブランディング向けの新指標を策定する動きもありますが)

ブランディングの例

上記の「グルメサイト オプト」において、かねてよりTV CMによりブランディングを行っていましたが、インターネットにおいてもブランディング施策を行うニーズが発生しました。

  • TV CMを元にしたストーリー仕立ての動画広告を配信(はじめてのレストラン編)
  • 動画からはキャンペーンサイトへ誘導し、はじめてのレストランの思い出をシェアをするキャンペーンを実施
  • リーチ目*16はユニークユーザーで100万人
  • 広告配信予算は1,000万円(キャンペーンサイト作成費別途)
  • 配信期間は1ヶ月
  • 配信中の各種SNSでの反応を集約し分析、また反応数を計測する
  • 配信完了後、アンケート調査によりブランドリフトを検証する

このようなプランとなった背景としては、すでに実施されているTV CMでは1ヶ月あたり100万人に視聴されている計算で、そのためにかかっている費用が約1,200万円であるからです。そのためプランとしては、同水準のリーチ目標と、それよりも費用対効果が良くなる予算*17が設定されました。

広告配信だけでなく、エンゲージメントを高めつつそれを実証するため、キャンペーンサイトも絡めた複合的な施策になっています。エンゲージメントについては、各種SNSの反応により分析・計測します。

また、配信完了後、リサーチ会社などによりアンケート調査を実施し、飲食店の予約といえば「グルメサイト オプト」を連想するかどうか、という調査を行います。広告接触オーディエンスが、非接触オーディエンスよりも連想する割合が高ければ、ブランドリフトが発生したと言えるでしょう。

ブランディングの課題

定量的に効果測定ができることを魅力の一つとしているインターネット広告において、ブランディングの課題とは成果指標が曖昧になりやすいことでしょう。

統一的な成果指標は立てづらいので、それぞれの場合において個別的に成果指標を設定する形で、広告主や代理店は奮闘している状況かと思います。

一方で、先に述べた通り人々のメディア指向が変化しつつあることを背景に、今後取り組むべき課題と考えている広告主も多く、事例は増えていくでしょう。

まとめ

インターネット広告において、ダイレクトレスポンスとブランディングという対になる概念があり、それぞれ異なる目的で広告配信していることを説明しました。

広告配信に限らずですが、何のために実施し、何を目指すのかを整理しておくことはとても大事です。

翻って、この連載の目指すところは何だろう…? ということで次回は未定です。できれば数年後もあまり変わらないテーマをやりたいと思っています。

目次:5分くらいで読めるエンジニアのためのインターネット広告講座
筆者紹介

tech-magazine.opt.ne.jp

*1:Cost Per Action or Cost Per Aquisition。広告の成果1件の広告費で、殆どの場合は実質Cost Per Conversionを意味するのですが、その場合は略語がCPCになってしまい他と重複するのと、必ずしもコンバージョンだけが広告の成果と言えないので、CPAと呼ばれているのだと思います。たぶん

*2:Return On Advertising Spend。投資額つまり広告費が何倍になって返ってきたか。CPAとの違いは、件数だけでなくそれによって得られた金額が加味されていることです

*3:バナー広告など、任意のメディアの四角形の広告枠に表示する広告です

*4:ここでは予約1件あたりにかかった広告費のこと

*5:自社サイトなどに訪れたオーディエンスを配信対象とするターゲティング。自社サイト内にリターゲティング用タグを埋めることで実現する

*6:実際に広告配信の諸々の設定や運用を行う人。インハウス運用でなければ、インターネット広告代理店やトレーディングデスクのマーケターやオペレーター

*7:どの種類のどの階層のページに訪れた来訪者を対象とするかなど

*8:居住地域や性別などの属性情報

*9:主にRTBというオークション形式で表示される広告が決定される場合

*10:Cost Per Click。クリック課金の広告配信プラットフォームの場合

*11:アフィリエイトなど成果課金の場合や、CPA金額を設定することにより自動最適化ができる広告配信プラットフォームの場合

*12:テレビ、ラジオ、新聞などのマスメディアを使った広告

*13:テレビを見る人が減ったとか、出版業界が苦戦しているとか

*14:広告接触オーディエンスが、非接触オーディエンスよりもブランドイメージが向上したこと

*15:オーディエンスのブランドに対する愛着心や思い入れ、ブランドに対して主体的に動いてくれるかどうか

*16:どれくらいの人に広告を視聴されることを目指すか

*17:インターネット広告はマス広告よりも費用対効果の良さが謳われることもあるため