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JSAI2022イベントレポート

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JSAI2022のイベントレポートです。

あいさつ

こんにちは。AIソリューション開発部の岩田です。2022年6月14日〜17日に開催された人工知能学会全国大会(JSAI2022)に参加しました。一昨年・昨年の完全リモート開催とは違い、現地(京都)とオンラインのハイブリッド開催の形式です。古都の雰囲気を堪能しながら久々の研究仲間との再会で盛り上がったそうですね。私は、SNS上で流れる綺麗な風景や美味しそうな写真にいいなぁいいなぁって言いながら自宅から参加しました。以下、気になった研究について紹介します。

人工知能技術による精神疾患自動診断への挑戦

自然言語処理による精神疾患の自動診断

  • 著者:狩野 芳伸(静岡大学)

精神疾患の診断は問診によるところが大きく言語処理技術の活用が期待できる一方で、精神疾患に起因する会話の特徴、例えば注意を集中させることができない、文脈や単語のつながりが弱くなる、などを自然言語処理を用いて数量的に扱うことは難しいです。本研究では、健常者と5種類の精神疾患の患者に対して、フリートークや物語の説明などの様子について録音したデータを用いています。録音データに対し、話し言葉特有の曖昧さや会話の詰り・中断・休止などのアノテーションを行なっています。言語情報・音響情報を特徴量として、精神疾患か否かの2値分類をSVMを用いて実施したところ、概ね80%超えるaccuracyが出たことを報告しています。様々な疾患の言語上の興味深い特徴が見られたことも指摘しています。一方で、まだデータ数が圧倒的に少なく、数値的な性能評価だけに注目してはいけないことなどを問題として挙げていました。

分野の需要は大きく研究の社会的インパクトはあるものの、データ数確保の問題は乗り越えるべき壁としてあり、今後どのように発展していくのかが注目していきたいと感じました。

パレイドリアテストによる視覚認知機能検査に基づく精神疾患の自動診断に向けて

  • 著者:Zhaohui Zhu(東京大学、国立情報学研究所)、Marc A. Kastner(京都大学)、佐藤 真一(国立情報学研究所、東京大学)

何かの模様が顔に見えてしまうなどの、本来そこに無いものを「見て」しまう心理現象はパレイドリア現象と呼ばれています。この症状はレビー小体型認知症の患者さんに顕著に見られる症状で、ノイズ状の図版(40枚)を提示して顔が見えるか否かの問診を通して診断が行われます(ノイズパレイドリアテスト)。 本研究では、40枚のノイズ状図版を用いたテストを機械学習を使ってより効率的に診断できないか検討しています。 本研究では、診断対象患者さんのノイズパレイドリアテストにおける振る舞いをノイズ画像を判定する判別器と見做して、判別器を判別する機械学習モデルを作成することを試みています。実際の患者さんのデータで解析した結果、概ね90%ぐらいのmAPを達成していることを報告しています。

診断対象の患者さんをある種の判別モデルと見做して、判別モデルを判別することで診断の材料とするというアイディアが興味深かったです。

機械学習を用いたインドネシアの泥炭地における地下水位予測

  • 著者:宮﨑 荘太(東京大学)、愛知 正温(東京大学)、西津 卓史(株式会社IHI)、長谷川 正雄(株式会社IHI)、加藤 剛(住友林業株式会社)、鈴木 克幸(東京大学)、米倉 一男(東京大学)

インドネシアでは、泥炭地の乾燥による森林火災が増加しており、火災による二酸化炭素排出が問題となっています。泥炭地の火災の発生のしやすさは、地下水面の高さと相関していることが指摘されており、地下水位を適切に予測・制御することができれば、二酸化炭素の大量放出の原因となっている森林火災を抑制できることが期待されています。本研究では、機械学習を用いてインドネシアMendawak地域における泥炭地の地下水位とその変化量の予測を試みています。機械学習の手法としては、LSTM、RandomForest、SVM、XGBoostを用いて、入力値としては対象地域の気象変数(気温・降水量・カナル水位データ)を設定しています。 予測結果としては、地下水位を±2cm程度の精度で予測できたことを報告しています。 またSHAP値を用いて学習モデルを分析したところ、降水量が地下水位の予測に大きく寄与していることを指摘しています。このことは、物理シミュレーションを用いた地下水位の解析結果から示唆される、対象地域の物理的特性と整合していると考察しています。

地下水位予測のために作成した機械学習モデルをSHAP値を用いて解析し、分析対象の地理的な特徴や物理的な特性と整合していることを分析している点が興味深く思います。

まとめ

今年は、機械学習の説明性にも着目した研究例が目立ったように感じます。弊社でも様々な業務プロセス上で機械学習を用いること目指して研究開発を行なっておりますが、説明性も意識することで、よりビジネス応用に貢献できるのではないかと感じました。

2年ぶりの現地開催であり、対面で議論することの大切さを改めて体感したなどの声がたくさんSNS上で見られました。一方で、オンライン開催の参加への気軽さや発表の録画公開などの良さも昨年に引き続き改めて感じました。開催にあたりご尽力いただいた皆様に心より感謝申し上げます。 来年のJSAI2023は熊本での開催が予定されています。

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